勝ち目……
拓馬が言うように、今はどう考えても蒔田のほうが奏葉に近い。
クラスだって同じだし、携帯番号だって知ってるし、夏休みにバイクで何度も遊びに行く。
それに引き換え、俺はちょっとした親戚の上に、居候。
それ以外のなんでもない。
落ち込んでいると、頭上から拓馬の声がした。
「あれ?奏葉ちゃんと蒔田だ」
「え?」
俺は反射的に顔を上げると、きょろきょろと辺りを見回した。
「今、二人で話しながら向こうに歩いて行ってた」
拓馬が廊下を指差す。
そして俺を見て、にやりと笑った。
「仲良さそうに話してたけど、これから二人で帰るのかな?デートだったりして」
「黙れ!」
俺はいい加減なことを言う拓馬を睨むと、スクールバッグを掴んで立ち上がった。
「真宏、どこ行くんだよ?」
突然立ち上がった俺に拓馬が声を掛ける。
「追っかける」
「え?あの二人を?」
俺は教室を出ると、拓馬が指差していた方へと歩いた。