「この人が主人の祐吾さん」
「よろしくね、真宏くん」
「はい」
俺が頷くのを確認すると、カオルさんは祐吾さんの隣に座ってさっきから黙ったままでいる女の子の後ろに立った。
「この子が春陽(ハルヒ)ちゃん。私の娘よ」
カオルさんに紹介された春陽は、俺を見るとにっこりと笑った。
そして、出会って初めて口を開く。
「よろしくお願いします!」
明るい元気な声だった。
「春陽ちゃんは、中学一年生なの。K大の付属中学に通ってて、頭いいのよ」
カオルさんが春陽の頭を軽く撫でながら、自慢気に言った。
カオルさんの態度を見て、彼女が血は繋がりのない春陽を娘として可愛がっているのがよく分かった。
「あともう一人は……」
そこまで言いかけて、カオルさんは口を噤んだ。
カオルさんが何故か悲しそうな目で祐吾さんを見る。
「あたし、お姉ちゃん呼んでくるよ!」
カオルさんと祐吾さんの無言のやり取りを見た春陽がそう言って立ち上がった。