「そんな簡単な問題じゃねぇんだよ」

俺が不機嫌な顔で見上げると、拓馬はおどけたように肩を竦めた。


「何で?どっちみちふられるんなら、ちゃんと告白してすっきりした方がいいだろ」

拓馬の軽い発言に引っかかりを感じた俺は、目を細めて彼を睨む。


「どっちみちふられるってどういうことだよ?」

「だって、奏葉ちゃんは蒔田と付き合ってんだろ?」


蒔田……!?


拓馬の口から出たその名前に、俺は嫌悪感を顕わにする。


「まだ、絶対そうだって決まったわけじゃない」

俺が強い口調で反論すると、拓馬が呆れ顔で俺を見つめた。


そして、傷心の俺にさらに痛い言葉を突き刺してくる。


「けど、蒔田は夏休みも奏葉ちゃんと連絡取り合ってたのに、数ヶ月同じ家に住んでた真宏は彼女の携帯番号すら知らないんだろ?その時点で勝ち目はないと思うけど……」


心に殴られたような鈍い衝撃を受けた俺は、机の上にへばりつくようにぺたんと額をつけた。