「やっぱやめた……」
真宏は小さな声でそう言うと、掴んでいた私の手首を離した。
「そわが帰ってきたら、今朝のこと謝ろうと思ってた」
私が真宏を見上げると、彼は悔しそうな顔をして唇を噛んだ。
「だけど、やっぱり謝らない。俺は認めないから」
そう言い残すと、真宏は私に背を向けた。
そして一人で先に家の中に入っていく。
家の前に取り残された私は、しばらくそこに立ち尽くしたまま動けなかった。
謝らない――?
認めない――?
何を――……?
いくら考えても、私には真宏の気持ちがわからなかった。
だけど、真宏が私に向けた哀しそうな目と悔しそうに唇を噛んだ横顔だけは、いつまでも脳裏に焼き付いて離れなかった。