「朝からずっとあいつと一緒にいたわけ?」
真宏の不機嫌な声が上から降ってくる。
私は彼から視線を反らすと口を噤んだ。
「そわ。聞いてるんだけど」
黙っていると、真宏が掴んでいた私の手首を引っ張った。
真宏との距離が急に近づいて、思わずドキリとする。
「黙ってないで、答えろよ」
真宏が私を睨みながら、低い声を出す。
それでも黙っていると、真宏の顔が近づいてきた。
反らせないように、真宏が至近距離で私の目をじっと見つめる。
昨夜のようにまた真宏にキスされそうな気がして、ぎゅっと目を閉じる。
そのまま顔を背けようとすると、真宏が私の耳元でやけに切ない声でささやいた。
「あいつとは一日中一緒に過ごせるのに、俺はちょっとした親戚でただの居候?」
「え……?」
そっと目を開けると、真宏はもう私を睨んではいなかった。
その代わりに、どこか哀しそうな目をして私の顔をじっと見ていた。