後ろを気にしながら蒔田と話していると、玄関にもたれかかっていたはずの真宏がもの凄く怖い形相で歩いてきて私の隣に並んだ。
「蒔田だっけ?もう夕飯だから、とっとと帰ってくれる?」
真宏は蒔田に不機嫌な声でそう言うと、隣に立っている私の手首を掴んだ。
「そわも。早く中に入るぞ」
「え?ちょっと……」
手首を掴んで私を家の中に引きずり込もうとする真宏を見て、蒔田がくすっと声をたてて笑った。
その笑い声を聞いた真宏が、足を止めて蒔田を睨む。
蒔田は怖い目で睨む真宏の目を数秒見つめ返したあと、私の方を向いてにっこりと笑った。
「じゃぁね、月島さん。また新学期に」
蒔田は笑って私に手を振ると、バイクに乗ってそのまま去っていった。
去っていく蒔田の背中を見送っていると、同じように私の横で彼を見送っていた真宏が舌打ちをする。
「何なんだよ、あいつ」
真宏は低い声でつぶやくと、私のことを睨むように見下ろした。