空が暗くなり始めるまで取り留めのない話をしてから、私たちは喫茶店を後にした。

喫茶店を出ると、蒔田が私にヘルメットを手渡す。


「家まで送るよ」

蒔田に言われて、私は来たときと同じようにバイクの後ろに乗って彼の背中に掴まった。

バイクはまた十五分ほど走って、私の住む町に戻る。

いつも天体観測のあとに降ろしてもらう最寄の駅で、私は蒔田に声を掛けた。


「ここでいいよ」

「いや、家まで行くよ。すぐ近くでしょ?」

蒔田はそう言うと、さっと駅を通過した。

私は蒔田の後ろから、家までの道案内をする。

家の前に着いたときには、日はもうすっかり落ちて空はだいぶ暗くなっていた。


「ありがとう」

私はバイクから降りると、蒔田にヘルメットを手渡した。

蒔田が笑顔で、私の手からヘルメットを受け取る。


「遅かったな、そわ」

そのとき、背後で真宏の声がした。