「何も答えられないの?まぁ君、かわいそう」
「どういうことよ?」
私の問いかけに、春陽が小さく肩を竦める。
「お姉ちゃんは人を傷つける天才だね」
春陽は唇の端を歪めると皮肉っぽく笑った。
そうして立ち上がると、腕を掴んで私を部屋の外と引っ張り出す。
「もう出てって。あたし、お姉ちゃんがまぁ君としたこと絶対許さないから」
「ちょっと、春陽!」
春陽は私を部屋の外に完全に追いやると、勢いよく部屋のドアを閉めた。
春陽との間にできてしまった分厚い障壁に向かって私はため息をつく。
確かに、春陽の気持ちを考えると彼女が怒るのもよくわかる。
でも、怒りの矛先を私に向けるのは見当違いじゃないかと思う。
だって、キスをしてきたのは真宏の方で私じゃない。
それに、私は真宏を好きじゃない。
じゃぁ嫌いなのかと問われると、以前のようにすぐに頷いたりはできないけれど……