「それは……」
自分でもその理由がよく分からない私は、答えられずに口ごもる。
しばらく口を閉ざしていると、春陽が起き上がって私を睨むように見上げた。
「理由もなくキスしてたわけ?」
春陽に問われ、困って眉根を寄せる。
すると彼女がわざとらしく大きなため息をついた。
「あたしが考えつく理由は二つ。一つ目は、あたしがまぁ君を好きなことを知ってて、お姉ちゃんはわざと彼を部屋に誘いこんでその気にさせた」
春陽が抑揚のない声で、理論を述べる学者みたいな説明口調で話し出す。
「は!?あんた何言ってんの?」
春陽は思わずしかめ面になる私をチラリと見ただけで、同じような口調で話し続けた。
「二つ目は、まぁ君がお姉ちゃんのことを好きになった。お姉ちゃんはどう思う?」
話し終えた春陽が挑戦的な目で私を見上げてくる。
「どうって……」
返答に困っていると、春陽が私をバカにするように小さく鼻で笑った。