俺がもう一度奏葉にキスをしようとしたとき、彼女の手の平が俺の頬を思いきりはたいた。


「……っ!?」

思わず小さな悲鳴をあげた俺を、奏葉が睨みつける。


「どういうつもりか知らないけど、あんたはもうちょっとマシなやつなのかと思ってた。私の見当違いだったみたい」

「な……」

俺が反論しようとすると、奏葉がそれを遮るように口を開いた。


「一応言っとくけど、委員長だったら絶対こんなことしないと思う」


奏葉がその言葉を口にした瞬間、鈍器で頭を殴られたような強い衝撃を感じた。


蒔田だったら――……?


奏葉を抱きしめていた俺の腕が、力なく堕ちる。


奏葉は俺を乱暴に押しのけると、春陽を追って部屋から出て行った。



蒔田だったら――……?


「何だよそれ……」

手の平を握り締め、ベッドに拳を打ちつける。


奏葉に打たれた頬が痛い。

でもそれ以上に、心の奥が腫れあがったみたいにズキズキと痛かった。