奏葉は後ろを振り返ることなくずんずんと進んでいくと、彼女がよく行く公園の前をあっさりと通過した。
公園に出かけていたわけではないのか。
俺はますます訝しく思いながら、先を進む奏葉の後ろを数メートル離れて追った。
夜道が静かなので、足音をたてて奏葉に気付かれないようにすることも忘れない。
そうして後をつけていると、駅にたどり着いた。
もう遅い時間なので、駅は人気が少ない。
それに、電車ももう終電が迫っている頃だ。
俺は立ち止まると、駅から少し離れたところで奏葉の動向を窺った。
奏葉の動きを目で追っていると、彼女は駅のロータリーに止まっているバイクに近づいていく。
バイクの横には俺と同じくらいの年と思われる男が立っていて、奏葉に笑いかけていた。
「誰だ……?」
俺は男の顔をよく見ようと、もう少しだけ駅の方へ近づいた。
そして目を細める。