夜十一時を過ぎた頃、それまで静かだった奏葉の部屋から小さな物音が聞こえた。
それに続いて、ドアの開閉する音がする。
その音は本当に小さくて、よく耳を澄ませていないと聞こえないほどだった。
でも、ずっと奏葉の部屋の様子を伺っていた俺には、彼女が部屋を出たということがわかる。
俺はしばらく様子をみてから、そっと自分の部屋のドアを開けた。
部屋を出て階段の上から玄関をそっと覗くと、奏葉が物音をたてないように静かに玄関から出ていくところが見えた。
こんな時間にどこへ行く気だろう。
俺は眉を顰めながら、誰かを起こしたりしないように静かに階段を下りた。
そして、奏葉がしたようにそっと玄関のドアを開閉して外に出る。
家の門から少し顔を出すと、歩いていく奏葉の後ろ姿が見えた。
こんな夜中に、どこへ行くんだ……
思いあたったのは、奏葉がよくひとりで訪れている近くの公園だった。
それにしても、夜遅くにひっそり出かけて行くのはおかしい。
俺はこっそりと奏葉の後をつけてみることにした。