蒔田は遠くを見て黙っている私を、しばらくじっと見つめていた。
そうしたあとに、爽やかな笑顔を私に向ける。
「もうすぐ夏休みも終わりだね」
蒔田が私を気遣って、話題を変えてくれたのがわかった。
蒔田に視線を向けると、小さく頷く。
私が蒔田と視線を合わせると、彼は少しほっとしたように頬を緩ませた。
「夏休みが明けたら進路希望の調査があるらしいよ」
「そうなの?」
「うん、一学期の終業式の日に担任が言ってたよ。月島さん、途中で保健室に行ってたみたいだから聞いてないでしょ?」
「そうなんだ」
終業式の日。
星のキーホルダーを若菜に奪われてしまった私は、結局教室に戻らないまま夏休みを迎えてしまっていた。
だから、進路希望調査の話は初耳だった。
真宏も茉奈もそんな情報を私にくれなかった。
もっとも、私にそんなことを話す状況ではなかっただろうし、私も受け入れられる状況ではなかっただろうけど。