蒔田はバイクを走らせると、何度か天体観測をしに訪れたグラウンドを通り過ぎて人気の少ない道に入って行った。
その道を進むと、途中からカーブの多い細い山道になる。
蒔田は登れるギリギリのところまでバイクを走らせた。
蒔田がバイクを止めたのは、ハイキングコースの入り口らしい階段の前だった。
私を先に降ろして、蒔田が山道の端の邪魔にならない場所にバイクを停める。
「ここから少しだけ登るよ」
蒔田が山の上へと続く木でできた階段を指した。
昼間なら普通のなんてことない山道なのだろうけど、街灯ひとつないその階段は先が見えなくて真っ暗だ。
お化けでも出そう……
暗闇に続く階段にほんの少し怖じけづく。
辺りを見回すと、蒔田がバイクを止めたあたりに他にも数台見慣れたバイクが止まっている。
他の天文部の人たちも既に集まってきているみたいだ。
彼らはもう、この階段を登ってその先で待っているんだろう。
そう思うと、少しだけ暗闇に対する恐怖も和らいだ。
私は頷くと、蒔田のあとについてハイキングコースの入り口に立つ。