「なんか最近、隠れてこそこそしてるだろ?」
「こそこそ!?意味分かんないんだけど……」
夜中に抜け出していることを真宏に感づかれているんだろうか。
少しだけ焦ったが、私はなるべく平静を装って真宏にそう返した。
真宏が私にじっと疑いの眼差しを向ける。
「何してるか知らないけど、祐吾さんやカオルさんに心配かけるようなことはするなよ」
あの女の名前が出てきて、私は少しむっとした。
「なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ?」
私が不機嫌な声でそう言ったとき、階段の下から春陽の声がした。
「お姉ちゃん、まぁ君。そこで何してるの?」
春陽は私と真宏の顔を交互に見たあと、彼の手が私の手首を掴んでいることに気付いて眉を顰める。
私は慌てて真宏の手を振り払うと、春陽と真宏に背を向けた。
「別に何もしてないから」
「お姉ちゃん?」
ぶっきらぼうに言い放った私の背中を春陽が呼びとめる。
だが、私は振り返らずにそのまま階段を上った。