「蒔田先輩、何デートの相談してるんですか?」

突然頭上から声がして顔を上げると、以前天文部の部室で蒔田をからかってきた後輩の男子がにやにやと笑っていた。


「西口……そんなんじゃないから!」

にやにやと笑っているその後輩に、蒔田がしかめ面を返す。

西口と呼ばれた彼は小さく舌を出すと、私たちの傍に腰を落とした。


「だって、蒔田先輩が女の人といるの珍しいから」

西口が私を見て笑う。


「月島さん……ですよね?これに懲りずにまた来てくださいね。蒔田先輩も喜びますから」

最後の言葉を聞いた蒔田が西口の頭を軽く小突く。

後輩にからかわれている蒔田は、教室でまじめな顔をして立っている彼とは違って何だか可愛い。

私は苦笑いしながら、蒔田と西口のやり取りを見守った。


それからしばらくして、天文部の活動がお開きになる。

蒔田は来たときと同じように、私を家の近くの駅までバイクで送ってくれた。