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蒔田と天文部の活動に参加する約束をした日の夜、私は夕飯を食べたあとに少しだけ仮眠をとった。

約束の時間より少し前に起きた私は、服を着替えて出かける準備をする。

天文部の活動に参加することは家族の誰にも話していない。

何となく見つかるのが嫌で、私はそっと自分の部屋を出るとまだ灯りがついているリビングの前の廊下を静かに抜けた。

そして音を立てないように玄関から抜け出す。

玄関を出てドアにしばらく耳をあてていたが、家の中は静かで気付かれている様子はなかった。

ほっと胸をなで下ろすと、駆け足で駅に向かう。


そこで蒔田と待ち合わせをしていた。

駅に着くと、駅前のロータリーにバイクがひとつ止まっていた。

その横に立っていた蒔田が、私を見つけて手を振ってくる。


「月島さん」

名前を呼ばれて、私は待っている蒔田に小走りで近づいた。


「遅れてごめん」

スマホで時間を確かめながらそう言うと、蒔田がにっこりと笑った。


「全然。時間ぴったりだよ」