「ありがとう」

奏葉が俺の至近距離でにっこりと笑う。

その笑顔が、俺をドキリとさせた。


あぁ、ほんとはこんな風に笑うんだ――……


胸の奥が何かで締め付けられたみたいにギュッと狭くなる。


「どういたしまして」

だけど俺がそう答えた瞬間、奏葉の顔からは笑顔が消えていつもの無表情の彼女に戻ってしまう。

奏葉の笑顔が一瞬で消えてしまったことに、俺はひどくがっかりした。


観覧車はあっという間に頂上を通り過ぎ、地上へとたどり着く。

観覧車を降りた俺は、無愛想な顔で隣を歩く奏葉の横顔をちらりと盗み見た。


「何?」

視線に気づいた奏葉が、怪訝そうな目で俺を睨む。


「別に」

短く答えると、奏葉が俺の様子を窺うように横目で見てくる。

その奏葉の眉間にうっすらと皺が寄っているのに気がついた俺は、ふっと口角を引き上げた。


「またできてんぞ?ぶさいくの原因」

立ち止まると、人差し指の腹で奏葉の眉間にできた皺を擦る。