澄ました顔で俺を睨んでいる奏葉だったがその様子は何だか落ち着きがなくて、彼女が窓の外が気になって仕方ないことはすぐにわかった。
笑いを堪えながら、ジーパンのポケットを探る。
そして、観覧車の頂上に着いたら奏葉に渡そうと思っていたものを手の中に握りしめた。
「そわ。手、出して」
笑ってそう言うと、奏葉が怪訝そうに眉を顰める。
「何?」
「いいから」
俺は警戒して手を出そうとしない奏葉の手を無理やり掴むと、手の中に隠していたものを彼女の手に握らせた。
「何?変なものじゃないでしょうね?」
疑い深い目で見つめてくる奏葉に、俺はにっこりと微笑みかける。
「手、開けてみろよ」
奏葉はまたしばらく俺のことを疑いの眼差しで見つめたあと、握りしめていた手をそっと開いた。
手を開いた瞬間、奏葉が大きく目を瞠る。
そして、手の平の中にあるものと俺の顔を交互に見比べた。