「ねぇ、混んでるからあとにしない?」
さりげなく尋ねると、真宏は顔をしかめて大きく首を振った。
「何言ってんだよ。一時間なんて少ない方だろ?これからどんどん人が増えるんだから、今のうちに並んどかないと」
私は言い返すことができず、真宏の隣に無言で立った。
乗り場に一歩近づくごとに、大きくなる乗客たちの悲鳴。
元々少ない口数がさらに減っていく私の横で、真宏は子どもみたいに興奮して上を走っていくジェットコースターを眺めていた。
「早く乗りたい!」
その横で、私は乗車までの時間が少しでも長くなることをひたすらに祈る。
いよいよ順番がやってきて、私と真宏は乗り物の真ん中辺りに座らされた。
「一番前がよかった」
そんなふざけたことをぼやく真宏の隣で、私は安全ベルトをしっかり締める。
動き出したジェットコースターは、最初からどんどんと上へ登っていく。