「本気でそう思ってるやつが、あんな振り方すんの?今男いないから、偶然目についた俺に執着してるだけで、どうせすぐにまた他に好きなやつできたとか言うんだろ?」
若菜の俺に対する感情はきっと、前みたいに一時のものだ。
なんとなくそう感じるから信用できない。
冷めた声でそう問うと、若菜がほんの少し目を伏せた。
「それ以前に、俺は今のお前に何の魅力も感じない。他人の大事なもの奪って傷つけて、それをネタにこんなマネして。そういうやつとは頼まれても付き合いたいと思わない」
若菜は地面に座り込んで俯くと、それ以上は何も言わなかった。
若菜の瞳からぽたりと水滴が零れ落ち、それが地面に小さな染みを作っていくのが見える。
だけど俺は、若菜に手を差し伸べることはしなかった。
今の俺の手は、若菜の涙を拭うためにあるんじゃない。
若菜から取り戻した星のキーホルダーを手のひらにのせて、指先でなぞる。
それを見せたときの奏葉の笑顔が、頭の中に浮かんで消えた。