「どうする?」

若菜がクスクスと笑い、俺の耳にそっと唇を這わせてくる。

そうして身体をぴったりと密着させてくる彼女に、俺は少しも魅力を感じなかった。

たかがこんなことのために、若菜が悪戯に奪い取った星のキーホルダー。

それを失った奏葉が、どれだけショックを受けて、今も深く傷つているか……


雨に濡れた奏葉の泣き顔。

掠れた声。

絶望した目で縋りついてきた、震える指先。

あの日の奏葉のことを思い出すと、若菜に対して嫌悪感しか湧いてこなかった。

こんなやつと、頼まれたって付き合いたくない。

だけど、奏葉の星は若菜のスカートのポケットの中にある。


「そわ……」

声にならない声で、その名前をつぶやく。

彼女は今この瞬間も、失くした母親の星を思って静かに泣いているのかもしれない。


俺は心を決めると、首に縋りつくように抱きつく若菜の身体を両腕で乱暴に引き寄せた。