「真宏はさぁ、どうして最近月島さんにそんなに執着してるの?あたし見たよ。終業式の日、真宏が雨に濡れて泥まみれの月島さんを抱きしめてるの。あの子のことが好きなの?」
「は?つまんねぇこと聞くなよ。俺はキーホルダーを返せって言ってんの。話をそらすな」
若菜を睨むと、彼女が俺の方にすっと近寄ってきて手の平で俺の頬を撫でた。
「じゃぁ、こういうのはどう?」
若菜は手の平で俺の頬を撫でたあと、背伸びをして俺の首に両腕を回した。
若菜に抱きつかれるような格好になり、眉をしかめる。
それでも若菜は俺の表情にはお構いなしで、俺の耳に唇を寄せると甘えるようにささやいた。
「今すぐここで、抱きしめてキスして。そうして、あたしと付き合うって誓って。そしたらキーホルダーは返してあげるし、もう月島さんには何もしない」
俺は背筋がゾクリと粟立つのを感じた。
それが若菜の真意か――……