立ち上がってイラついた声で怒鳴ると、若菜が俺の神経を逆撫でるようにクスクスと笑う。
それからキーホルダーを指で摘んで、頭上に翳した。
「月島さんもこれを必死で探してたよね。超ボロくて汚いキーホルダーなのに、雨の中どろどろになっちゃってて可笑しかったぁ。これ、そんなに大事なものなの?」
若菜がキーホルダーを見あげて目を細める。
「気になるなぁ」
若菜がキーホルダーを見つめながら、クスクスと意地悪く笑う。
「いいから、早く返せよ!」
苛立ちが増してつい声を荒げると、若菜が意味ありげに笑った。
「やだ、って言ったら?」
若菜の大きな瞳が挑戦的に俺を見上げる。
俺は若菜に近寄ると、彼女の腕を掴んだ。
「なら、力づくでも取り返す」
俺が若菜の手からキーホルダーを奪おうとすると、彼女は俺から逃れてキーホルダーをスカートのポケットにいれた。
彼女を押さえつけて身体にでも触らなければ、簡単にはキーホルダーを奪うことができなくなり、思わず舌打ちする。
悔しそうな俺の顔を見て、若菜が笑った。