朝からキーホルダーを探し続けていた俺は、夏の暑さにバテてしまい地面に尻を落とす。
ジュースでも買いに行くか……
そう思ったとき、頭上に影が落ち、冷たいものが頬に触れる。
それがあまりに冷たくて、俺は思わず悲鳴をあげて飛び上がった。
「ふふ。真宏ってば、驚きすぎ」
笑い声が聞こえて顔を上げると、目の前に制服姿の若菜が立っていた。
「はい」
若菜がにっこりと笑いながら、俺にペットボトルのジュースを差し出してくる。
「お前、何やってんだよ?」
目の前に差し出されたペットボトルを手の平で払うと、俺は煩わしそうな目で彼女を見上げた。
「何って、今部活が終わったとこだから」
若菜は笑いながらそう言うと、俺に差し出していたペットボトルの蓋を開けて自分で一口飲んだ。
「いらないの?」
若菜が今度は、蓋の開いたペットボトルを俺に差し出す。
「そんなもん、いるか」
突き放すようにそう言うと、若菜がほんの少し傷ついたように瞳を揺らした。