「真宏、何言ってんの?それより奏葉ちゃん、大丈夫?」
拓馬は俺が奏葉と手を繋いでいたことに気付いていなかったようで、茉那への言い訳の言葉を探してしどろもどろになっている俺に、少し冷たい視線を向けてきた。
拓馬の言葉で、茉那の視線も自然と俺から逸れる。
俺はほっとすると同時に、心の内で拓馬に感謝した。
「茉那。教室で起きたこと、真宏にも話してやれよ」
拓馬に促され、茉那が頷く。
茉那は視線を落としながら、終業式が始まる前に教室で起きた出来事を話してくれた。
奏葉に何があったのか。
なぜ彼女が星のキーホルダーを失ってしまったのか。
茉那の話を聞き終えた俺の胸に湧き上がってきたのは、静かな怒りだった。
奏葉を直接傷つけたのは、若菜の行為。
だけど、若菜が奏葉のキーホルダーを窓の外から投げ落とすという行為に及んだのはおそらく俺のせいだった。