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俺と奏葉は、保健室のソファに並んで座っていた。
保健室にあったタオルで雨に濡れた身体を拭いたものの、髪の毛も制服もまだ乾いてはいなかった。
奏葉の頭がゆっくりと俺の肩にもたれかかり、彼女の触れた髪が顔にあたる。
ドキリとして奏葉に視線向けると、泣き疲れたのか彼女は俺の横で静かな寝息をたてていた。
俺は奏葉の寝顔を見てほんの少し微笑むと、ソファに座って繋いだままでいた彼女の手をそっと握り締める。
その手はひんやりとしてとても冷たかった。
雨の中外に飛び出した俺は、奏葉が泣き止むまでずっと彼女を抱きしめていた。
雨がどれだけ強く打ち付けても、俺は奏葉を離さなかった。
普段なら憎まれ口を叩いて俺をはねつける奏葉だったが、彼女は俺を拒絶することはなかった。
“ママの星”だといういつも身につけていたキーホルダーの喪失が奏葉に与えた衝撃は、それだけ大きかったということだ。