俺は奏葉に駆け寄ると、彼女の上に傘を差し出した。
「お前、何やってんの?」
俺が尋ねると、奏葉は立ち上がって汚れた手の甲で頬を拭った。
そこについていた砂が、彼女の頬を汚す。
奏葉は俺に背を向けると、ふて腐れたような声で言った。
「探し物」
奏葉の言葉に眉をしかめる。
「は?こんな雨の中?バカじゃねぇの?」
「あんたには関係ないでしょ!ほっといて!」
突き放すように言う奏葉のその声が、ほんの少しだけ掠れる。
見ると、俺に背を向ける奏葉の肩が小刻みに小さく震えていた。
「そわ?」
俺が奏葉の肩に触れると、彼女が拒絶するようにそれを振り払う。
「そわ!」
だが俺は振り払われた手をもう一度奏葉の肩に置くと、強く引っぱって彼女を自分のほうに向かせた。
手の甲で雨を拭ったはずの奏葉の頬が、また濡れている。