俺は窓の傍を離れると、一直線に廊下へと駆け出した。
途中、クラスメイトの机の傍にビニル傘が立てかけられているのを見つけ、それをひったくるように掴み取る。
「ちょっと貸して!」
相手の返事を待たず、俺は誰かの傘を掴んで廊下を駆け出した。
始業を知らせるチャイムの音が廊下に響く。
それでも俺には立ち止まる余裕なんてなかった。
校舎の外に出ると、傘を挿して奏葉を見た場所へと一気に駆ける。
俺がそこにたどり着いたとき、彼女は地面に膝をつけたまま必死で花壇の中を探っていた。
「そわ!」
大きな声で呼びかけると、奏葉がビクリと肩を震わせて振り返る。
振り返った奏葉の頬を、雨がいくつもの筋となって伝わっていく。
顔を歪めた彼女は泣いているように見えた。
それはきっと、雨のせいばかりではないはずだ。