何気なく窓の外に腕を差し出すと、ぽつりと一滴の水がそこに落ちた。
「降ってきた」
眉を潜めてつぶやく。
ふと地面へと視線を移すと、校舎の壁に付くようにして作られている花壇の前で一人の女子生徒が座り込んでいた。
彼女は地面を這いずるように動き回りながら、必死な様子で花壇の中を掻き回している。
しばらく見ていると、彼女は立ち上がって花壇から少し離れた場所を何度もぐるぐると歩き回り始めた。
「こんな雨の中、何やってんだろ?」
自然と湧き上がった疑問が口を衝いて出る。
そうしている間に、次第に雨脚は強くなってきた。
水滴だった雨が、筋となって地面に降り注ぐ。
だが、雨が激しくなっても彼女はそこを立ち去ろうとはしなかった。
不意に彼女の動きが止まったかと思うと、天を振り仰ぐように顔を上げる。
雨が、彼女の顔を打つ。
その顔を見たとき、俺ははっと息を飲んこんだ。
「そわ?」
天を仰ぐ彼女の瞳に映っているのは、どうしようもないくらいの絶望だった。