「は?」
拓馬があんまりくだらないことを言うから、俺の顔が一瞬にして不機嫌になる。
「何でそうなるんだよ」
俺は低い不機嫌な声を出すと、自分の席に戻った。
腕組をして、足を投げ出すように椅子に腰掛ける。
拓馬は俺が不機嫌になっていてもそんなことはお構いなしで、俺の後ろをついてきた。
俺の前の席に座った拓馬が、窓の方に視線を向ける。
「あれ?何かすげぇ曇ってきた。雨降んのかな?」
拓馬につられるように、俺も窓の方に視線を向ける。
学校に到着したときは雨の素振りなど見せていなかった空が、気づくとどんよりと曇っていた。
「俺、傘持ってない」
俺は立ち上がると、窓の方に歩み寄った。
「俺も」
立ち上がった俺の後ろで、拓馬のため息交じりの声が聞こえる。
俺は窓の傍に立つと、風が入るようにと少しだけ開けられていた教室の窓を全開にした。
頬に触れる生温い外気が、湿った雨の匂いを誘う。