「奏葉、今日は一体どうしたの?」


父達ともめた翌日、私は朝からものすごく機嫌が悪かった。
             
昨日の怒りが消えないため、茉那が話しかける声にもまともに返事ができない。

苛々する気持ちをずっと引き摺ったまま、現在昼休みに至る。


「どうもこうも」

私は購買で買ってきたばかりのパンを口に咥えると、荒い鼻息と共にそれを噛み千切った。


「奏葉?」

私の機嫌が多少悪くてもいつもはさほど気に留めない茉那が、今日ばかりはやや怯えたように引き気味でいた。


「居候が来るんだって!」

茉那の様子を見て、悪いなぁと思った私は低い声で彼女に言った。


「居候?」

状況がよく飲み込めていない茉那が、ぽかんと口を開けて私を見上げる。

         
「そう、居候。あの女の親戚の息子を、一年間程うちに住まわせるんだってさ。そいつの親が海外赴任になったらしくって」

「へぇ、そうなんだ」

私の怒りの原因が分かった茉那が、ようやく要領を得たというように頷いた。