「はい、こっちは返すねぇ」

若菜は星のキーホルダーが外れたスマホだけを私の方に差し出した。


「ちょっと……それ、返して!」

私は強い口調でそう言うと、若菜が持つキーホルダーに手を伸ばした。

だけど若菜は意地悪く笑って、それを私から遠ざける。

そしてそれを持ったまま、教室の窓際へと颯爽と歩いて行った。


私は椅子から立ち上がると、慌てて若菜を追いかける。

窓際に立った若菜は、指に星のキーホルダーのチェーンの鎖をぶら下げていた。

それをときどきゆらゆらと揺らしながら、愉しそうににやにやと笑う。


「月島さんが必死になるなんて珍しいね。いつもクールなのに。これ、よっぽど大事なものなんだぁ」

リップグロスで艶やかに光る若菜の唇が意地悪く歪む。


「彼氏からもらったものだったりしてぇ。やっぱり男好き?」

言いたい放題の若菜を、私は鋭い目で睨んだ。

私を見て、若菜がおどけたように肩を竦める。