「真宏と同じ家に住んでるだけじゃなくて、蒔田くんとも仲がいいんだねぇ」
舌足らずの声の主は、私が無視しているにも関わらず次の言葉を話しだし、そして私の目の前へとその姿を現した。
東堂 若菜。
せっかく明日から夏休みだというのに、一学期の最終日に若菜に絡まれるなんてツイてない。
私は若菜にもそれがはっきりとわかるくらいに、しかめっ面をした。
顔をしかめている私を見て、若菜が人を小馬鹿にするような顔で笑う。
「月島さん、その顔と性格で面食い?」
私はため息をつくと、茉奈に若菜に関わらないようにと目で合図を送った。
茉奈が若菜を気にしながら、息を飲んで小さく頷く。
その顔と性格で、って……
真宏と蒔田と話しているだけで面食い呼ばわりされるのは謎だけど、「その顔と性格で」というとこだけは、その部分をそのまま若菜に突き返してやりたい気分だった。
真宏のことが好きだから、同じ家に住んでいる私のことが気に入らない。
私は好きであいつと同じ家に住んでいるわけじゃないのに……
そのことでいちいち突っかかってくる若菜の方がよっぽど性格が悪い。