「奏葉、おはよう!」

蒔田が立ち去ると、茉奈がぱたぱたと足音をたてて私に歩み寄ってきた。


「委員長と何話してたの?」

立ち去っていく蒔田の背中を見て、茉奈が不思議そうに首をかしげる。


「うん、ちょっとね」

私はそう言うと、蒔田から受け取ったばかりの天体観測の日程表をスクールバッグにしまった。


「ふぅん」

天文部と蒔田のことを茉那に秘密にするわけじゃないけど、ただ何となく彼女に言いにくい。

こそこそとする私に対して、茉奈も特に深く追求するつもりはなかったようで、さして興味無さそうに短く相槌を打つ。


「あ、そういえばさ――……」
「月島さんって、見かけによらず男好きなんだぁ」

茉奈が私に何か言いかけたとき、すぐ後ろで舌足らずの甘ったるい声が響いた。


朝から嫌な声を聞き、私の表情が瞬時に不機嫌になる。

私が不快なその声を無視していると、その傍らで茉奈が不安そうな面持ちで声の主の動きを見守っていた。