奏葉はハンバーグが夕飯に出た日から毎晩、カオルさんの作った料理を食べていた。

食卓では何も喋らないが、残さず全部食べる。

少しはカオルさんに対するわだかまりが解けてきたのかと思っていたが、そういうわけではなかったみたいだ。

奏葉の華奢な後ろ姿を眺めながら、ふと拓馬の言葉を思い出す。


俺が奏葉を好き――……?


その言葉を思い起こして、ゆるゆると首を横に振った。

奏葉の行動は確かに気になる。

だが、彼女の隣にいても俺は何も感じない。

ただの愛想のない女としか思えない。


俺は拓馬の顔を思い出し、唇の端をほんの少しだけ持ち上げて笑った。