そっと視線を横に向けると、そこには目をつりあがらせた奏葉の顔。

俺は自分が彼女の前で失言をしてしまったことをはっきりと自覚していた。

どうごまかそうかと髪の毛をくしゃくしゃと掻く。

そうしているうちに奏葉の視線がそれた。

俺はそのことにほっとして、花壇の雑草へと手を伸ばす。


「草抜き、俺も手伝うよ」

花壇へと伸ばした俺の手の甲に、突然ぴりっと衝撃が走った。

驚いた俺は、あわてて花壇から手を離す。

何が起きたのかわからずにいると、奏葉が冷たい声で言った。


「あの女の関係者のくせに。触らないで。ここはママの花壇」

隣を振り返ると、奏葉が怖い顔をして俺を睨みつけていた。

俺は小さく肩をすくめると立ち上がる。

そして奏葉から数歩離れたところで、彼女の後ろ姿を見守った。