「奏葉!お前も子どもじゃないんだから、いつまでも分からないことを言うんじゃない!」
父が私を見上げて怒鳴る。
その横で、あの女は心配そうな顔をしてただおろおろとしていた。
「そうだよ、お姉ちゃん。同居の期間は、その子が高校卒業するまでの一年ちょっとなんだって。男の子が来るなんて楽しみじゃん。おかあさん美人だし、お姉さんも美人らしいから、イケメンが期待できるかもよ」
重々しくなった雰囲気を和ますためか、春陽が軽い口調でそう言った。
でも私は目の前であの女を庇うように私を怒鳴りつけてくる父も、ただおろおろするだけで何もできない彼女も、二人に加担するような態度をとる春陽も許すことができなかった。
あまりの怒りで、体中が熱い。
私は階段の上から三人を睨むように見下ろすと、低い声で言った。
「私は、絶対に認めないから」
「奏葉!」
踵を返して階段を登る私の背中に、父の怒鳴り声がぶつかる。
私はそれを無視して、自分の部屋に入ると大きな音を立ててドアを閉めた。