庭に降りるとすぐに、花壇の前に座り込んでこちらに背を向けている奏葉の姿が目に入った。
後ろから彼女にそっと近づき声を掛ける。
「何してんの?」
俺が声を掛けると、奏葉は驚いたように身体をビクリと引きつらせて振り返った。
俺の姿を確認すると、奏葉が不機嫌そうな顔付きで見上げてくる。
「見てわからない?」
相変わらず冷たく愛想のない彼女の声。
俺は思わず苦笑した。
「庭作業してることくらいはわかるけど。もうちょっ愛想よく答えてくれたっていいだろ?」
奏葉はしばらく俺を見上げたあと、感情の籠もらない声で言った。
「ママの花壇の手入れをしてる」
その言い方の棒読み具合に俺はまた苦笑した。