若菜は俺の背中に頬を押し付けたまま、再び口を開いた。


「真宏、最近月島さんや都築さんと仲良いでしょ?それを見るたび、あたし、すごく切ない気持ちになった。自分でもバカだって思うけど、別れてから気付いたの。あたし、あたしね……今でも真宏のことが――……」

今さら若菜の口から、その言葉の続きを聞きたくはなかった。

俺にとっては若菜とのことは既に過去だ。

今彼女が俺に対して好意を抱いてくれていたとしても、答えられないし答えるつもりもない。


「若菜……」

しがみつく若菜の腕を引き剥がそうとしたとき、俺の耳に皮肉っぽい声が届いた。


「帰り道塞がないでもらえる?邪魔なんですけど。ここ、校門前だから」

俺にしがみついていた若菜の腕が反射的に離れる。
                 
振り返るとえらそうに腕組みをした奏葉が立っていた。

奏葉の隣には、真っ赤な顔をして俯く茉那がいる。


「よくおモテになることで」

嫌味たっぷりな声でそう言って、奏葉が唇の端を高く引き上げた。

ふと若菜の方を見ると、唇を強く噛み締めて奏葉の方をじっと睨むように見つめている。