「とにかく、俺はもうお前と関わる気はないから」

きっぱりと若菜にそう言って、彼女に背を向ける。

歩き出した俺を、若菜が走って追ってきた。

追いついた彼女が、後ろから抱きつくように俺の身体にしがみつく。


「真宏、待って」

若菜は俺の腰にしっかりと腕を回すと、背中に頬を摺り寄せてきた。

背中に当る柔らかい感触に、思わずドキリとする。

若菜は俺の身体に抱きついたまま、切な気な甘ったるい声を出して俺に語りかけた。


「真宏。あたしね、別れてからも真宏のこと忘れたことない。ずっとずっと、別れたこと後悔してたんだよ?」


どこまで本気なのかわからない若菜の言葉に、俺は背を向けたまま苦笑した。


別れてからも忘れたことがない?

すぐに他の男と付き合いだしたくせに、か?

俺が黙っていると、若菜が腰にしがみつく腕に力を込めた。

簡単には逃げ出せないくらい、強い力で若菜がしがみついてくる。