「ねぇ、一緒に帰ろぉ」
上目遣いに俺を見ながら、若菜がやけに甘えた声を出す。
付き合っていた頃はとても可愛く見えていたそんな彼女の仕草に、今は少しも魅力を感じなかった。
俺はため息をつきながら、若菜の腕を引き剥がす。
「突然、何?」
冷たい声でそう言うと、若菜が落ち込んだようにしゅんと睫毛を伏せた。
「真宏、冷たい……」
面倒くさい。
若菜を見てそんな風に思った俺は、彼女の言葉や行動全てに苛立っていた。
「俺達、もう何の関係もないだろ?今さら何なんだよ」
苛立っている俺は、若菜に対して冷たい言い方しかできなかった。
早くこの場を立ち去りたい。
そういう思いしか湧き上がってこない。
「そうだけど……」
若菜が睫毛を伏せたまま、今にも泣き出しそうな声を出す。
ますます面倒くさい。
心の中で何度も舌打ちしたい気分だった。