俺が奏葉を好き――?


そんなの絶対ありえない。

バカバカしいその考えを、頭を横に振って否定する。


確かに、初めて会った頃のように奏葉を憎んだりできない。

母親の死で傷を負っている奏葉のことを野放しで放っておけないとは思う。


だけどそれが恋愛感情に結びつくかというと、そこはまた別問題だ。

だいたい拓馬は物事を単純に考えすぎる。

放っておけないからといって、それがイコール好きに繋がるとは限らないのだ。


拓馬にそのことをよくわからせるため、俺は放課後までずっと拓馬に話しかけられても聞こえないフリをした。

それでも拓馬は簡単にめげたりはしなかった。


幼なじみのその根性は、結構尊敬すべき点だと思う。