私は腹を立てて赤くなっている真宏から視線を反らすと、考えこむように腕を組んだ。
「でも、自分から別れたんならどうして……」
「なぁ。もしかしてそれって、若菜が?」
独り言をつぶやきながら考え込んでいると、真宏が私の靴を指差した。
思い出して地面を踏みしめると、また靴の中が水を含んだ嫌な音をたてる。
「それはどうかな」
小さく肩を竦めると、真宏が神妙な面持ちで私の目を見つめた。
「もし若菜の可能性があるなら、俺が話しするけど……」
やけに真剣な真宏の顔つきが可笑しくて、思わず吹き出す。
「いいよ。確かに今朝はちょっと揉めたけど、何の確証もないのに犯人扱いしたら悪いし。仮にも彼女はあんたのことが好きなんだから、あんたから疑われたら傷つくでしょ?」
「でも……」
まだ何か言いたそうな真宏に、私は口角を持ち上げて笑って見せた。
「私は別に平気。それより、茉那が傷つけられるようなことがあったら、そのときは誰であっても許さない」
私がそう言うと、真宏が意外そうな顔をした。