「そわ!」

学校を出て歩いていると、不意に後ろから呼び止められた。

立ち止まって振り返ると、真宏がこっちに向かって走ってくるのが見えた。


「今帰り?」

追いついた真宏が私の隣に並ぶ。


「だったら何?」

今朝のこともあるので、わざとそっけなく答える。

そのことに真宏は気を損ねたのか、眉をぴくりと動かした。

真宏から視線を反らして歩き出すと、彼も私のすぐ隣に並んで付いてきた。


私から真宏に話しかけることはほぼないに等しい。

だから、彼が私に話しかけてこない限り、私達の間には会話がない。

本来であれば私達の間には沈黙と言う静けさだけが漂っているはずだ。


だけど、私の濡れた靴が鳴らす音が耳に煩わしい騒音として私達の間を盛り上げていた。

ぐちょぐちょと靴が音を鳴らすたびに、真宏が変な顔で私の方を伺う。

私は何も言わなかったが、数メートル進んだところで彼が私の靴の異変に気がついた。