「蒔田先輩、夏休みに誘うなんて積極的ですね」

さっき蒔田をからかっていた後輩が、私達のやり取りを見てまたニヤニヤとしていた。


「バカ。お前はちゃんとレポートに集中しろ」

蒔田に怒られ、後輩の男子生徒が小さく舌を出して肩を竦める。


「ごめん。何かあいつが変なこと言ったけど、気にしないで」

蒔田が困ったように笑う。

私はそれに小さく頷いた。


蒔田は穏やかで、大人っぽい。

そんなに会話をしたわけではないのに、何だか安心して話ができる人だった。
           
ただうっとおしいだけの真宏とは雰囲気が違う。


「じゃぁ、夏休みの日程、楽しみにしてる」

私はそう言うと、天文部の部室を後にした。