「これ、ありがとう」
私が差し出した本を見て、蒔田が小さく頷く。
「あぁ、ありがとう。もういいの?」
蒔田に爽やかな笑顔を向けられ、私は俯きがちに頷いた。
「面白かった」
「そっか。それは良かった」
小さな声で感想を告げると、蒔田が満足気に笑う。
「あ、そうだ!」
突然、蒔田が何か思い出したようにポンと手を打った。
そして、自分が作業していた机に戻って何かを探し始める。
不思議に思って見ていると、蒔田が恥ずかしそうに頭を掻きながら私のところに戻ってきた。
「もうすぐ夏休みでしょ?夏休みに、部活で天体観測をするんだ。流れ星も見に行ったりするんだよ。だからその日程表を渡そうと思ったんだけど……今手元にないみたいなんだ」
「そう……」
「今度教室で日程表を渡すよ。良かったら遊びに来て」
そう言って蒔田が笑う。
「ありがとう」
蒔田の爽やかな笑顔が、私を少しドキリとさせた。
つられて、私もほんの少し彼に微笑み返してしまう。