一瞬大きく目を見開いてから、茉那がふわりと顔をほころばせて笑う。
茉那の顔からはいつの間にか涙の影が消えていた。
「奏葉、優しいね」
ふわふわとした笑みを浮かべる茉那に見上げられて、私は何だか急に恥ずかしくなる。
「別に、優しくなんかないよ」
視線を反らし、ぶっきらぼうな声で茉那に答える。
でも茉那は、にこにこと笑いながらもう一度私に言った。
「うぅん。奏葉は優しいよ」
「もういいって。友達だったら当たり前だし……」
「ありがとう」
茉那はその日、私と顔を合わすたびに何か思い出すようににこにこと笑っていた。