「同居してる。だったら、何?」

私は無表情且つ感情のこもらない声で若菜に尋ねた。

私のその反応が若菜の意にそぐわなかったのか、彼女が形よく整えられた眉をほんの少しだけ顰める。

だが、すぐに愛想の良い笑みを頬に浮かべた。


「あたし、去年真宏と同じクラスだったんだぁ。そのときからずっと思ってたんだけど、真宏って優しいよねぇ。昨日も月島さんのこと保健室まで迎えに行って家まで連れて帰ってくれたんでしょう?」

私は愛想の良い若菜の笑顔の裏に隠された真意を読み取ってやろうと、目を細めて彼女の様子を伺った。

だが猫を被った彼女の笑顔から真意を読み取ることはなかなか難しい。

若菜が真宏のことを好きなことはわかる。

だから、私や茉那に何をしてほしいのだろう。

何を求めているのだろう。

真宏に引き合わせてほしいのだろうか。


でも、若菜と真宏はお互いに下の名前を呼び合っていたのだからただ引き合わせてほしいというわけではないと思う。

黙って思考を巡らせていると、若菜が一瞬だけちらりと茉那に視線を向けた。

そして、また私の方に向き直る。