「月島さん、おはよぉ」
一人でママの夢の余韻に浸っていると、珍しい人物が私に話しかけてきた。
東堂 若菜だ。
彼女のやや後ろ隣に、茉那がくっつくようにして立っている。
「奏葉。おはよう!」
どことなく嬉しそうな顔をしてそう言った茉那を見て、嫌な予感がした。
「おはよう」
茉那の顔だけを見ながら答えると、若菜が馴れ馴れしく私に話しかけてきた。
「月島さん、昨日は大丈夫だったぁ?体育のあと倒れて結局戻ってこなかったから心配したんだよぉ」
舌足らずの語尾を延ばすような甘ったるい若菜の声。
やっぱり好きになれないその声は、私にとっては雑音にしか聞こえなかった。
私が答えずにいると、若菜が次々と私に言葉を投げかけてくる。
「月島さんのお母さんと真宏って、親戚同士なんだねぇ。今、同居してるんでしょ?さっき茉那から聞いたよぉ」
若菜の言葉に私は眉を顰める。
ちらりと茉那に視線を向けると、彼女は慌てて睫毛を伏せた。